流通業者に丸投げしても売れない!


事例


M社は下請製造業であったが、そこからの脱皮を目指して自社商品を開発した。既に先発業者が成功を収めているものだけに、大きな期待をかけての開発であった。しかし有望と思われた販路は既に競合が厳しく割り込む隙間がない。そこで、新しい販売チャネルとして、大手問屋K社と、総代理店契約を結んだのである。ところが売上はさっぱりで、契約後1年で月商100台がやっと、採算ベースの300台には程遠い状況であった。M社社長は、「販売は総代理店に任せてあり、此方で販売促進費まで負担しているのだから、K社が売るのは当たり前だ。なぜ売ってくれないだ!」と憤慨していた。


原因と課題

自ら販売をやったことのないド素人がよく陥りやすい錯覚である。総代理店だから『勝手に売ってくれる』という考え方自体が間違っているのである。「実は、K社は、総代理店になったからといって売らなければならない責任など全く感じていないですよ。もっと言えば、K社の関心事は、自社の業績であって、貴社ではない。総代理店になったのは、貴社製品がK社の業績に貢献してくれるかもしれないと思って契約しただけです。貴社製品のためだけに、精力的に手間と労力をかけて売るようなことはしません」と私は断言した。M社社長は、鬼のような形相をしながら黙っていた。私の言うことが未だ理解できないまま、販売が思うように振るわない現実があるため、いうに言い返せないという状況であった。

その後、流通網の基本原則についてレクチャーした。

  • 卸問屋が忠誠誓っているのは、代理店契約しているメーカーではない。自社の業績に忠誠を誓っている。メーカーの製品は、その業績アップの数ある道具の中の一つでしかない。
  • 全国に販売網がある「大手」だから売れるとは決して限らない。「大手」であればあるほど、取り扱い製品が多く、営業担当者が目移りして、放っておけば「より楽で簡単で、マージンが高く、インセンティブあるもの」ばかり売ってしまうのである。「大手」だからという理由で、過大な期待をかけることはしない。むしろ、新規性ある製品は、地域占有率の高い中堅問屋や製品知識の高い専門問屋の方が、まだ話が早い。
  • メーカー側が販売手数料や販促費を負担しようが、自動的に販売してくれるまで期待してはならない。それらに負担は、「販路使用料という賃借料」でしかない。その販路で売れるか否かは、「メーカー自らの販売努力」にかかっている。

解決策


「わかりました。じゃ、ウチの場合はどうすればいいですか」とM社社長は答えを急いだ。私は「同行販売大作戦」と提案した。とりあえずK社営業所にM社製品を持って行って、昼間は、K社営業担当と同行販売で顧客小売店を1件1件回る。小売店の要請があれば、実地販売支援も行う。夜は、K社の営業担当と食事等で仲良くなる。K社が許せば、「週三日以上、三か月続けてみる」というものであった。最初、M社社長は、そんな人員裂けないとか、接待費が高くつくとか、難癖をつけていたが、後々それ以上の見返りがあるからと私は強く勧めた。M社社長を中心メンバーとして、実際の現場に回らせたところ、2週間もしないうちに、「私の考え方が間違っていました。現場も知らずして販売できると思っていた私が甘すぎました。」とわざわざ連絡をくれた。その後、順調に販売数は伸び、2か月目後半には、300台を突破し、3か月目には、400台まで達成したのである。M社社長は、やっと販売と流通というものはどういったものかを身をもって覚えたのである。

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